シリコーンゴムの特性
f)耐薬品性
シリコーンゴムの耐薬品性は、使用される生ゴムの種類、充填剤の種類及び添加量、添加剤の種類、架橋密度
などにより多少異なります。通常生ゴムのポリマー側鎖にフェニル基を導入したゴムは、芳香族系の溶剤に対
して膨潤しやすいです。トリフルオロプロピル基を導入したフロロシリコーンゴムは、ガソリンなどの燃料油
に対して優れた特性を持ちます。
シリコーンゴムは、高温時の耐油性が優れているのと同時に、膨潤後に溶剤が蒸発すると、ほぼ元の特性を示
すという優れた点があります。一般にシリコーンゴムは強酸、強アルカリに対しては、主鎖の分解による劣化
が顕著です。
g)難燃性
ULや電気規格を満たすために、難燃性シリコーンゴムコンパウンドがあります。シリコーンゴムの難燃性は
添加剤としては、通常の有機系難燃剤を配合することはありませんから、燃焼時に発生するガス、煙などはよ
り安全性が高いのが特徴になっています。
h)その他の特性
ⅰ)圧縮永久ひずみ
シリコーンゴムは低温から高温まで広い温度範囲で、圧縮永久ひずみ特性が優れています。個々のシリコー
ンゴムの圧縮永久ひずみは、使用している生ゴム、充填剤の種類及び量、加硫剤の種類、加硫条件などによ
り変化します。このうち生ゴムの種類による影響が最も大きな要因です。側鎖にビニル基を導入した生ゴム
を使用するのが有効です。ビニル基量は圧縮永久ひずみに対する重要な要因ですが、ビニル基量が0.01以上
のものは架橋密度が高すぎて物性が低下し、耐熱性にも悪影響を与えます。
シリコーンゴムにビニル基を導入する方法として、Vi/Si比率の高い生ゴムをビニル基を含まない生ゴムと
ブレンドした場合、圧縮永久ひずみを改善することが出来ます。
加硫条件が圧縮永久ひずみに与える影響は、アルキルタイプの加硫剤(過酸化物)がアシッドタイプに比較
して良好な結果が得られます。
また、二次加硫を十分に行うことも圧縮永久ひずみの低下に効果があります。
ⅱ)膨張率、比熱、熱伝導率
シリコーンゴムの体膨張率は、一般に6~8×10-4cc/cc/℃です。比熱は一般的に硬度の高いものほど低くな
りますが、0.28~0.35cal/g/℃です。高熱伝導率1~4×10-3程度のものも配合可能になっており、放熱用部
品などに使用されています。
ⅲ)気体透過性
シリコーンゴムの気体透過性は、非常に高い値を示します。シリコーンゴムの気体透過性が高いだけでなく
、酸素透過率に対して窒素の透過率は約1/2、二酸化炭素は約5倍、水蒸気は60倍の値を示します。
このような性質を利用して、ガスの分離・濃縮等に利用されます。
ⅳ)耐放射線性
シリコーンゴムの耐放射線性は必ずしも良好とは言えません。耐熱性を同時に要求される用途に使用されま
すが、一般にフェニル基を導入したシリコーンゴムが使用されます。
ⅴ)耐水蒸気性
シリコーンゴムは、加圧水蒸気のもとでは、主鎖の加水分解が起こるため、130~140℃以上の加圧水蒸気
下での寿命は短くなります。耐水蒸気性を向上させるには、充填剤の疎水化、架橋密度の増加、充填剤の選
択などが考えるべき要因です。