シリコーン樹脂の性質・種類

シリコーン樹脂の性質・種類

2016年08月31日(水)4:38 PM

 シリコーン樹脂の性質
シリコーン樹脂は電気特性・耐熱性・耐候性・撥水性・高硬度に優れ、電気特性の温度変化が少ないという大  
きな特徴を持っています。
耐候性・耐水性・難燃性・接着性(向きに対して)・耐放射線性にも優れています。
シリコーン樹脂は疎水性であるため、水や、水に溶解した電解質の影響を受けにくい性格があります。
化学的に不活性で、他の化合物を吸収したり、化学反応を起しにくい性格もあります。

   シリコーン樹脂と有機樹脂の簡易性能比較

性  能 シリコーン樹脂 有機樹脂
耐熱性 250℃以下 200℃以下(特殊樹脂を除く)
電気特性 低温~高温域まで安定 高温・多湿の条件下で低下
耐候性 耐紫外線に優れる 耐紫外線に劣る
耐水性 低吸水性に優れる 吸水率が大きい
耐薬品性 強酸・強アルカリに弱い 概ね良好
接着性 概ね良好、特に無機物に対して 概ね良好、特に有機物に対して
機械的強度 強くない、分子間力が小さい 良好、分子間力が大きい
難燃性 良好 不良、難燃剤の併用が必要

 シリコーン樹脂の硬化システム
シリコーン樹脂は大きく分けると、脱水縮合、脱アルコール縮合、ヒドロキシリル化の3つの硬化システムがあ
ります。
①脱水縮合反応 シラノール基を持ち、触媒は不要ですが硬化には加熱が必要になります。
②脱アルコール縮合反応 アルコキシシリル基を持ち、触媒を用いることによって、加熱硬化は必要ありませ
            ん。(空気中の湿気で反応します)
③付加反応 ヒドロキシリル基を持ち、触媒を用いますが、加熱硬化は必要になります。
    硬化方法
①硬化剤なしで加熱硬化する方法
②触媒型硬化剤あるいは反応型硬化剤を使用して硬化を促進させる方法
  *1.  触媒型硬化剤;乾燥剤・ドライヤーといわれているものです。
           亜鉛ジオクトエートまたは、ナフテネート
           マンガンオクトエートまたは、ナフテネート
        コバルトオクトエートまたは、ナフテネート
   *2. 反応型硬化剤
     シランカップリング剤(アミノシラン系)…常温でも硬化が進みますので2液型にします。
     以上は、加熱型シリコーン樹脂の場合です。
③常温型硬化剤
 硬化剤として主に使用されているのは、有機チタネート系、アルミ系、リン酸系、有機スズ系になります。
   有機スズ系は、その毒性から使用されているのが徐々に少なくなっています(対策品はあります)
   有機チタネート系は比較的マイルドな反応です。樹脂の有効成分によりますが添加量は1%~になります。 
   アルミ系は乾燥性はやや遅いが、高硬度の被膜が形成できます。
   リン酸系は乾燥性は優れています。
   相対的に、乾燥が早くなると塗膜が脆くなる傾向があります。      

   シリコーン樹脂の種類
①ストレートシリコーン樹脂
 a)メチルシリコーン樹脂
  有機置換基がすべてメチル基で構成されてたシリコーン樹脂です。
  非常に高硬度で、防湿性、絶縁性、撥水性・離型性のある被膜を形成します。
  常温硬化シリコーン樹脂の多くが、メチルシリコーン樹脂に属します。
  耐熱性塗料、耐候性塗料、離型コーティング剤、電気絶縁用コーティング剤等に使用されています。
 b)メチルフェニルシリコーン樹脂、フェニルシリコーン樹脂
  メチル・フェニルシリコーン、フェニルシリコーン樹脂は、有機置換基がメチル基およびフェニル基で
  構成されたシリコーン樹脂です。特に耐熱性に優れ(フェニル基が多いほど耐熱温度は高くなります)
  機械的強度(柔軟性等)、光沢のある被膜を形成します。
  フェニル基の含有量にもよりますが、多いほど有機樹脂との相溶性は良くなりますが、硬化速度は遅く
  なる傾向があります。
  有機樹脂にメチルフェニル・フェニルシリコーン系ブレンドすることによって、耐熱性・耐候性等を改善
  することが出来ます。(有機樹脂変性シリコーン樹脂は共重合化したものになりますが、この場合の
  ブレンドはただ混合撹拌したものになります)
  ポリカーボネートのコンパウンド時に添加することによって難燃性を付与できます。環境調和性・安全性
  の観点から従来のアンチモン系、ハロゲン系、リン系の難燃性の代替えとして注目が高まっています。
②有機樹脂変性シリコーン樹脂
 a)アルキッド変性シリコーン樹脂
  巨大タンク・橋梁等耐候性塗料のベース樹脂として長油長アルキッド樹脂、塩化ゴム、エポキシ・ウレタン
  樹脂が使用されていますが、アルキッド変性シリコーン樹脂が開発されました。
  従来の重防食系のトップコートとして、耐候性、光沢等に優れていました。現在は、その他の樹脂系が開発
  されたためあまり使用されていません。
 b)ポリエステル変性シリコーン樹脂
  カラートタンのアルキッド樹脂の代替え品として開発されました。焼き付け型の樹脂で工場のライン生産に
      向いています。耐候性・耐熱性・柔軟性・塗膜硬度・高光沢に優れています。
  c)ウレタン変性シリコーン樹脂
  シリコーン樹脂の特徴とウレタン樹脂の耐薬品性・耐酸性・耐水性を併せ持つ変性シリコーン樹脂です。
  塗膜は、光沢・硬さ・耐摩耗性に優れています。
  ただ、アクリルウレタンの技術改良によって、あまり性能差がなくなってきたように思います。
    d)エポキシ変性シリコーン樹脂
  シリコーン樹脂の特徴とエポキシ樹脂の耐薬品性・密着性を併せ持つ変性シリコーン樹脂です。
  常温乾燥・加熱乾燥共に使用できます(硬化剤の変更で)
  防食性・耐薬品性・耐熱性などに優れているため、応用範囲が広く耐熱塗料だけでなく電気特性が要求され
  る電気・電子分野にも使用されています。本来エポキシ樹脂は耐候性が悪いので、若干は改良されています
  が、ほかの変性シリコーン樹脂と比べると劣ります。紫外線の当るところでは、不向きです。
    e)アクリル変性シリコーン樹脂
  現在、有機変性シリコーン樹脂 の主流になっています。(水性・溶剤性があります)
  大きく分けると、アクリル樹脂と共重合したものと、アクリル樹脂とシリコーン樹脂をコールドブレンド
  (混合撹拌)になります。
  一概に言うことはできませんが、1液型は主にコールドブレンドの場合が多いです。2液型は、共重合
  タイプになります。1液型耐候性塗料の耐候性は、3年~5年程度持つといわれていますが、2液型耐候性
  塗料の耐候性は、概ね10年持つと言われています。
  水性アクリルシリコーン樹脂は、大部分は1液型のコールドブレンドタイプになります。つまり環境に
  優しいですが、塗膜性能に関しては、2液型と比べると劣ります。水性2液型は性能的には優れています
  が、硬化剤が若干不安定のためあまり販売されていません。共重合型の場合、シリコーン樹脂の配合量
  (共重合)が多いと脆くなりが、耐候性は良くなります。
  使用用途は、建材外装パネル、スレート瓦、重防食・屋外建築物(化学プラント)、車両塗装、自動車部品
  電子機器等幅広く使用されています。
  いずれの場合も、ベースになる有機樹脂の性能に左右されますから、アクリル樹脂の基本的性能が優れて
  いますので(コストパーフォマンスが優れている)広く使用されています。
  
     最後に各シリコーン樹脂の簡単な特性 

 メチル系メチル・フェニル系 エポキシ変性系 ポリエステル変性系 アクリル変性系
耐候性  ◎     ◎    ×               〇           ◎
耐熱性  ◎     ◎    〇              〇           〇
硬度  ◎     〇      △             △            △
可撓性  ×     ×    △              〇           〇
防食性  △     △    ◎             △           △

  
  
  
  
   
  
  




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