シリコーン樹脂の概論
B.シリコーン樹脂
シリコーン樹脂とは、結合エネルギーの高いシロキサン結合で構成された樹脂であり、その被膜は耐熱性・耐
光性・電気絶縁性・撥水性などの特性を持っています。高粘度の液体から固体までのさまざまな性状があり、
塗料・コーティング・電気用途などに幅広い分野で耐久性・安全性・信頼性の向上に役立っています。
シリコーン樹脂は、Si-O-Si結合で連結されているのですが、シリコーンオイルやシリコーンゴムと比較し
て有機置換基の数が少なく、置換基とSi原子の数の比R/Siは1~1.7の間にあるものがほとんどです。
R/Siの値と置換基Rの種類によって、シリコーン樹脂の性質は大きく変わります。
R/Si値 大きい 柔軟性の被膜
小さい 硬く・脆い被膜
置換基 メチル基が多い場合 硬く・強靭な被膜、硬化速度速い、疎水性、耐アーク性、耐衝撃性
フェニル基が多い場合 柔軟性、耐熱性、耐酸性、熱可塑性、有機樹脂との相溶性
シリコーン樹脂は、加熱によるものがほとんどですが、室温で硬化するものや、硬化時に副生物を生成しな
い付加反応型のものもあります。
Ⅰ)縮合反応型シリコーン樹脂
①加熱脱水縮合反応
R R R R
| | -H2O | |
-O-Si-OH + OH-Si-O → -O-Si-O-Si-O-
| | 加熱 | |
②室温湿気硬化反応
R R R R
| | 空気中の水分 | |
-O-Si-OX + OX-Si-O- → -O-Si-O-Si-O-
| | -2HOX | |
-OX;アルコキシ基、ケトキシム基、アセトキシ基、アミノキシ基など
Ⅱ)付加反応型シリコーン樹脂
R R R R
| | 触媒 | |
-O-Si-CH=CH2 + H-Si-O- → -O-Si-CH2CH2-Si-O-
| | | |
Ⅲ)過酸化物硬化反応型シリコーン樹脂
R R
| | R´OOR´
-O-Si-CH=CH2 + CH3-Si-O- →
| |
R CH2OR´ R
| | |
-O-Si-CH-CH2-Si-O-
| |
加熱脱水縮合反応は、高温長時間の反応が必要なのに対し、他の反応はより温和な条件で硬化できる点
が特徴です。また、付加反応は副生成物の発生がありません。
シリコーン樹脂は、電気特性・耐熱性・耐候性が優れていますが、機械強度・耐溶剤性などが劣る傾向が
あります。このような欠点を補うために、有機樹脂と共重合した変性樹脂が作られています。用いられる
有機樹脂としましては、アルキド・ポリエステル・エポキシ・ウレタン・アクリルなどがあります。
有機樹脂との変性によって、耐熱性などのシリコーン樹脂の特徴はある程度犠牲になりますが、機械強度
耐溶剤性・硬化特性などの有機樹脂の特徴を付与することが出来ます。
メチル系のシリコーン樹脂よりも、フェニル系のシリコーン樹脂の方が相溶性の点では優れているため、
共重合反応に用いられられやすい。溶剤の存在下で相溶させることも可能です。
上記の相溶性を利用して、コールドブレンド(反応させているのではなく、ただ相溶させているだけで
す)でお手軽に性能アップが可能です。ただ、反応させるよりも耐熱性・耐候性は劣ります。