シリコーンゴムの概論

シリコーンゴムの概論

2016年09月09日(金)3:38 PM

C.シリコーンゴム
 一般的にシリコーンゴムと呼ばれているものは、この熱加硫型を指します。
 シリコーンゴムは、高重合度オルガノポリシロキサン(シリコーンポリマー、シリコーン生ゴム、シリコーン
 ガムと言われています)を主原料に合成シリカなどの補強充填剤、粉砕シリカなどの増量充填剤、種々の特性
 付与のための添加剤等を調合混練したものです。
 シリコーンゴムは、有機ゴムに比べて、特に耐熱性・耐寒性に優れていますが、さらに耐候性・電気特性・圧
 縮永久ひずみ特性・反発弾性・離型性・低毒性などの優れた特徴も、持ち合わせています。
 わずかに常温での物理特性が低い、やや高価であるなどの欠点はありますが、その特性の安定性・耐久性など
 は、時代の要請にマッチして、自動車・電気電子機器・原子力発電・太陽光発電・航空機・建築・医療・食品
 等の分野で使用されており、年々使用量が増加しています。
 
 熱加硫型シリコーンゴム
①シリコーンゴムの原料
 a)シリコーンポリマー(高重合度ポリオルガノシロキサン、生ゴム)
 b)補強充填剤、準補強充填剤
 c)増量充填剤
 d)可塑剤
 e)添加剤
 f)加硫剤(架橋剤)
 a)シリコーンポリマー(生ゴム)
 一般的に使用されている生ゴムとしては、主としてジメチルシリコーン生ゴム・メチルビニルシリコーン生ゴ
 ムメチルフェニルシリコーン生ゴム、フロロシリコーン生ゴムがあり、それぞれ特有の性質を示します。
 
 ジメチルシリコーン生ゴムは、すべての有機基がメチル基のシリコーンポリマーです。
 この生ゴムをのみを用いたコンパウンドは、アシッドタイプの加硫剤でしか加硫できませんので、単体で使用
 されることはほとんどありません。
 
 メチルビニルシリコーン生ゴムは、一般にビニルシリコーン生ゴムとも呼ばれています。
 ビニル基は加硫特性・圧縮永久ひずみ特性等を改良する効果があります。現在流通しているシリコーンゴムの
 大部分はこの生ゴムを使用しています。

 メチルフェニルシリコーン生ゴムは、低温特性・耐放射線特性・耐炎性・引き裂き性に優れています。
 しかし、フェニル基が多すぎると、耐油性(アロマチック溶剤)・圧縮永久ひずみ特性等が悪化しますの
 で、一般には、メチルビニルシリコーンを少量共重合し、これらの特性を改良しています。

 フロロシリコーン生ゴムは、耐油性が一般のシリコーンゴムに比べると、著しく改良され、ほぼフッ素ゴム
 と同じです。しかし耐寒性はフッ素ゴムより優れています。
 加硫特性・圧縮永久ひずみ特性を改良するため、メチルビニルシロキサンを少量共重合しています。
 b)c)補強充填剤・増量充填剤
 シリコーンゴムに配合されている充填剤は、補強充填剤としては合成シリカが一般的であり、増量充填剤と
 しては、珪藻土、石英粉末等が調合混練されています。
 d)可塑剤
 充填剤を混練するために必要な成分です。有機合成ゴム等に使用されているプロセスオイルと同等の役割を
 持つ、比較的分子量の低いオルガノポリシロキサンです。
 e)添加剤
 シリコーンゴムは本質的に良い耐熱性を示しますが、さらに性能向上する目的で耐熱添加剤を配合することが
 あります。其々を目的とした特性を付与するために添加剤を配合します。
        代表的な添加剤は
 圧縮永久ひずみ;酸化カドミウム、酸化亜鉛
 粘  着  性;ホウ素化合物
 引 裂 き 性;テフロン粉末
 耐  熱  性;希土類金属化合物、酸化鉄
 耐  油  性;金属ケイ素、亜鉛化合物
 耐 放 射 線;フタロシアニン
 蜜 封 老 化;酸化マグネシウム、酸化バリウム
 難  燃  性;酸化銅、白金火防物、酸化チタン
  f)加硫剤
 シリコーンゴム用加硫剤は、通常過酸化物をペースト状に希釈したもので、ロール等で混練しやすくなってい
 ます。成形条件、成形品の使用条件を考慮して、加硫剤を選択する必要があります。
  シリコーンゴム用加硫剤
 ⅰ)ベンゾイルパーオキサイド;薄物成形用、ディスパージョンコーティング用、スポンジ用
 ⅱ)2・4ジクロルベンゾイルパーオキサイド;厚物成形用、熱風加硫用、スポンジ用
 ⅲ)ジキュウミルパーオキサイド;一般成形用、カーボンフィラー用
 ⅳ)2・5ジメチル2・5ジヘキサン;厚物成形用、2次加硫不要ストック用、カーボンフィラー用
 ⅴ)パラクロルベンゾイルパーオキサイド;一般成形用、熱風加硫用
 ⅵ)ジターシャリーブチルパーオキサイド;一般成形用、厚物成形用、カーボンフィラー用
②シリコーンゴムの製造方法     

  モ ノ マ ー

       ↓←重合                                                                                   

  シリコーンポリマー 

          ↓←補強充填剤、可塑剤の混練

      ベ   ー   ス

        ↓←準補強充填剤、増量充填剤、添加剤の混練

  コンパウンドU

      ↓←加硫剤の混練

   コンパウンド

      ↓←加熱

  シリコーンゴム成形品

 シリコーンゴムの配合原料は、①で述べたように6種類に分類されますが、ゴムそれぞれに要求される最終製
 品としての特性から、各分類中の数種の原料が組み合わされます。
 シリコーンポリマーの重合原料には、二官能ジオルガノクロルシランを加水分解して得られるハイドロリゼー
 トから分留された環状シロキサンが主として用いられます。
 それらの開環重合によって高重合度ジオルガノポリシロキサンである生ゴムを作ります。原料として用いられ
 る環状シロキサンとしては、ジメチルサイクリクス、メチルビニルサイクリクス、メチルフェニルサイクリク
 ス、ジフェニルサイクリクス、チルトリフルオロプロピルサイクリクス等があります。
 これらの環状シロキサンと種々のエンドブロッカーの組み合わせによって、いろいろなシリコーンポリマーが
 合成されます。

 ベースは、シリコーンポリマーに補強充填剤と可塑剤を加えて混練したものです。補強充填剤と可塑剤を加え
 混練したものです。補強充填剤としては、耐熱性に優れ、高温でもシリコーン分子を侵さないものとして、主
 に合成シリカが用いられます。合成シリカには、湿式シリカ(沈降法シリカ)と乾式シリカ(煙霧法シリカ)
 があります。乾式シリカは湿式シリカに比べ、はるかに増粘性が高く、吸湿性が低く、補強性があり、電気・
 電子用途へのシリコーンゴムに適しています。可塑剤は補強充填剤の分散促進、クリープ硬化の減少、シル
 エルフライフ向上等のために用いられます。

 コンパウンドUは、ベースにさらに、準補強充填剤、増量充填剤、添加剤を加え、混練したもので、まだ加硫
 剤が入っていない加硫剤未配合コンパウンドです。
 
 シリコーンゴムの加硫ですが、大別してラジカル反応型と付加反応型があります。もっとも一般的で実用的な
 のは、ラジカル反応型で有機過酸化物を加硫剤として用います。ラジカル反応には、放射線照射を利用する
 場合もあります。
 有機過酸化物による加硫機構は、次のように推定されます。加硫剤はゴム中で分解温度以上に加熱されると
 分解し、ラジカル反応を起します。これがシリコーンポリマーの有機基を励起し、橋かけ反応で加硫が進みま
 す。加硫剤の種類・添加量はシリコーンゴムの物性に大きく影響しますので、成形条件、コンパウンドの種類
 要求特性、用途等に合わせて選択することが必要です。


  
 
 

 






 



«   |   »

過去の記事